THAT IS GOOD THAT IS GOOD

トルコ・クルド 政治と文化の間にある深い溝 2

2012年6月20日~7月7日

YAKAZA ENSEMBLEのオマールの部屋で居候させてもらいながら、今後の計画を色々と進めていた。

そのYAKAZAのメンバーで実質リーダー的存在であるERAY(イーライ)からレコードを掘りに行くのを提案され当然快諾。

トルコの定食屋などでご馳走になったりもしたのだが、何故か写真は無し。。

ともかく

こういう光景を見るだけでも燃える・萌える。

地元の中野ブロードウェイを彷彿とさせるモノ、情報の渦!

あいにくトルコ語は読めないのだが、英語と直感を頼りに掘り進む。

掘り終わった後イーライ行きつけのカフェで一息。

都会にあるオアシス感。

こういうの必要です。

そしてまた喧騒に戻る。

イスタンブールはデモが多い印象。

ヤカマシくはあるが、みんなが社会、政治に関心を持ってるということはいいことだと思うし、

ある意味当たり前のことで、日本の近年の若者の政治離れはご存知の通りだが、

いつの間にか支配構造が強力になってるのは確かで、喚起はしたいところだ。

実際この2年後にトルコではクーデターが起きた。

結果は自分も詳しくは分かってないが、YAKAZAのメンバー曰くは最悪だ、と。

その後、メンバーの一人オマールがフランスに移住するなど、トルコの政治体制にも深い問題があるようだ。

日本の現状も外国人として訪れた者にとっては素晴らしい国、と思うかもしれない。

自分もトルコに外国人として訪れ、イスタンブールしか見なかったら、なんでこんないい国で?

と思うかもしれない。

この後のクルドエリアに行くまでは、分からないこともあったと思う。

本では読んでいたが、肌で感じる現実感は持てなかったと思う。

それは日本も然りなのだと思う。

六ヶ所村や辺野古や二風谷や能登を訪れたら、何か違う世界を見て感じるはずだ。

何かが異様な、黙殺された世界。

そして再びクルド系パーカッショニスト、ホギールと再開して、

ディアルバクルでの再会を誓う。

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その後、

前回のイスタンブールでライブの前座DJをさせてもらった

BABA ZULAというバンドのリーダー、ムラトが粋な車で迎えに来てくれた。

スタジオに行って、出来たらレコーディングもしたいと提案したら快諾してくれたのだ。

流石世界を飛び回る人気バンドだけあっておもちゃ箱の様だが、立派なスタジオ。

自分のこの当時制作中だったCOUNTERPOINTという作品の原型を聴いてもらい、

演奏もしてもらう。

しかし、ムラトの演奏はイマイチ入ってこない。

当然味もあるし、テクニックもないわけじゃない。

でも自分が求めてる音の世界とは何かがすれ違ってる気がした。

おそらく彼も感じただろう。

ともかく彼のバンドの相方であるパーカッショニストのレヴァントとはスプーンを録音することに!

なんでスプーン???

おもしろキャラのレヴァントの説明だと、

有名なトルコの軍楽隊などとは違う、庶民の最初の楽器の原初はスプーンだと言う。

美味い食べ物食って、ラク(トルコの有名な蒸留酒)でも呑んでいい気持ちになってスプーンを叩き出すんだ!と笑

そして木や鉄のスプーン2枚でカスタネットの様にカチカチ鳴らして小気味いいリズムを作り出す。

なかなかいい味でこの音は採用できた。

下記がその音が入った音源だ。

長い曲だが、7分後くらいからカチカチ鳴る音に注目して頂けたら。

https://crosspointproception.bandcamp.com/track/j-a-k-a-m-internal-vision-master-24b-441k-for-vinyl

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ということで実りあるセッションだった。

そしてしばしイスタンブールを出て、高速バスでいざ東へ。

なんだか童謡の様な風景で、

新鮮だけど懐かしい雰囲気。

バスの座席は決して広くはないが、思っていたよりも最新系な内装。

そしてまず最初の降車地、コニヤに到着。

イスタンブールとは違うノビノビとした雰囲気。

人も少ない。

しかし、

エ!

斧??

って思わず写真を撮ってしまったおじいさん。

まさに童謡の世界、笑。

東京だったら100%逮捕されるでしょう笑。

こんな光景がこの街には許される?

そして、ここはイスラム神秘主義のカリスマ詩人、アーティストであるルーミーに所縁がある場所で、

ルーミー目的で訪れる人も多い観光地でもある。

 ルーミー(13世紀) という人物は、イランの国民的詩人であり、

又、イスラム教における”神秘主義”の一派「メフレヴイー教団」の開祖でもある。

マスナヴィー とは、イランにおける詩表現の一形式。

ある意味ボブマーレー目当てで来るキングストンの様な感じか?
自分も御多分に洩れずルーミーは大好きで、彼の詩は自分の音楽制作ではなくてはならない人、
ヴァイオリニストの及川景子女史とのアラブ音楽講座で詳しく知ることになった。

自分が感銘を受けた詩は何個かあるが、
下記はまずその一つ。

音楽は言葉の表し得ぬ言葉を語る
音楽は国と民族を超える言葉、神を愛する者たちの言葉
ルーミー

お父さんも凄い笑

理智だけで物事を見るな。魂の平安を放棄した者に真理は発見されない
ヴェレド(ルーミーの父)

下記はエハン・デラヴィさんのサイトで見つけた言葉の抜粋。

★イスラム神秘主義
※宗教と音楽の超越の側面
トランス体験が、肉体から音楽=呼吸という感覚ツールを通じ、
神秘主義哲学という精神理論によって体系付けられている

イスラム神秘主義、スーフィーと呼ばれる人々の思想は、
マカームと同様古代ギリシアの哲学を受け継ぎながら発展した神学哲学と、
イスラムの人々の苦行から到達するトランス体験が一体となってシステム化されたものです。

ギリシア哲学の時代から、人々は万物の源に思いを馳せてきました。

これを受け継いで、イスラムという宗教と融合させた思想が13世紀ぐらいには独自のものとして形作られていきます。

イスラム神秘主義の人々はその根源は「無」であるとし、トランス体験を通じてその源と一体となります。

それはリグヴェーダでいう所の「無もなかりき」であり、仏教の悟りを通じて至る「空」の境地ともいえるでしょう。

そして、そこへの道筋にもまた、しばしば音楽そして踊りがともにあります。

音楽をこういった宗教儀式に使うことは、普遍的に見られる事ですが、
それは、音楽、踊りというものが人間の呼吸と鼓動であり、すなわち命の躍動であり、
音楽を辿っていく道筋もまた、源への回帰に繋がっているものであるからに他ならないでしょう。

このズィクルのように、言葉を唱え続け、一定のリズムにのる事で、人々は忘我の境地に至ります。

呼吸、踊り、音を通じてシンクロした肉体と心の、その先にあるのは、大いなる源への回帰です。
呼吸、それは人の肉体の内と外を循環して命を今この瞬間につなぎとめるもの。

すなわち、人の肉体と魂を結びつけるものです。
これをコントロールして究極魂の梯子をおりた一番最奥に、全ての源があるのです。

普遍的な音楽の側面を極度に儀式化し、高めた方法ですが、
逆に音楽の一つの側面を確信させるものでもあります。

今では私達の目に触れるもののほとんどはエンターテイメントとしての側面のみが活性化されたものばかりですが、本来踊りや音楽が内包する世界としての歴史は、むしろこちらのほうがずっと長かったのは確かです。

そして、それは、別段あやしいものでもなく、踊りや音楽を感じる事、それを深めていく事によって生じる、極自然な感覚なのではないかと、私は自分が音楽を演奏する立場からも感じています。

スーフィーは基本的にイスラムでは異端であり、トランスしたことで神と自分を同一視したかのようなことをいったかどで、何人もの人々が処刑されています。また、イスラムでは、音楽をむしろ異端視する傾向が強い。

統治、コントロールとしての宗教は分断と矛盾をはらみます。

この二点の要素がありながら、スーフィーも音楽も歴史のなかで消える事なく伝えられ、人々に愛されています。

女性の踊りもまたイスラムでは非常にある意味過激な事ですが、
エジプトではやはり国をあげて愛されるダンサーが生まれたりもしています。
エジプトの黄金期のカリスマ的スターダンサーであるタヒア・カリオカは言っています。

「踊るときはいつでも、私は自分の魂をごく身近に感じます。そしてそれはまるで祈り手のようです。
他の人がダンスフロアをどのように思っているかはわかりませんが、
私にとっては、それは、神をとても身近に感じる神殿の床のように思えるのです。」

宗教、音楽、踊り、その他様々な忘我のシステムがあります。それらの意味する所はひとつ、
私達は肉体を通してしかそれ感じる事はできず、それを知る事はできず、そこに帰り着く道ないということです。

スーフィーの代表的な詩人であるルーミーは、宗教を超越した詩を詠んでいます。
神秘主義詩人、ルーミー(1207現アフガニスタン-1273トルコアナトリア)の美しい詩をここで紹介しておきましょう。

この世界観が、まさにスーフィーの到達点を現しています。
そこには自我はなく、神の種別もなく、ただすべて一体であることを知るのです。

「ただひとつの息がある」

わたしはキリスト教徒ではない
ユダヤ教徒ではない
いいえ イスラム教徒でもない

わたしはヒンズー教徒ではない
スーフィーではない 禅の修行者ではない
いいえ どんな宗教にもどんな文化にも属していない

東から来たのではない 西から来たものではない
海や大地から生まれたものではない 天界から来たものではない
何かの要素からできているものでもない

この世やあの世に存在するものではない
アダムとイブのような太古の物語と関係はない
いいえ わたしは何者でもない

居場所は定まらない
跡を残すことはない
いいえ わたしは身体でもない魂でもない

わたしは
愛している
あの人のなかにいます

ふたつにみえて世界はひとつ
そのはじまりもその終りもその外側もその内側もただひとつにつながる
そのひとつの息が人間に息(いのち)を吹き込んでいます

ため息が出るほど美しく、気高いものを感じ涙するのは自分だけ??

そんなことで当然ルーミー記念館に。

観光地は苦手なタイプではあるが、日本では感じられないこのエリアの雰囲気も感じられ、良かった。

どういう流れか記憶が定かではないが、とにかく楽器演奏者とここで録音もすることになった。

最初はいい感じだったが、ある程度録音した後、ギャラを20万円近く要求され、
全然無理、と答えると、だったら消去しろ、みたいな事件があって、不快な思いをしたり、

同行したギョウが調子に乗ってしまい、どこかのモスクでムスリムになる宣言
シャハーダ(アッラー以外に神はいない、ムハンマドは最期の預言者、と言うだけ)を軽くしてしまい、
次の日に自分達が滞在してるホテルに地元のテレビ番組が押し寄せて、
日本人ムスリムがここで誕生した、みたいな撮影をすることになり、
ギョウがそんなつもりではなかった、みたいな発言を彼らに通訳したら、憤慨して帰ってく、
みたいな事件も勃発したり、上記のルーミーの崇高な世界とは程遠い感覚もここでは感じた。

歴史が古い田舎町だからか少し閉鎖的な感じ?

飲み屋は基本無く、お茶とシーシャを出すカフェがあり、そこの子たちは気さくでいい感じで癒された。

そんなこんなでホテルへの帰り道、ライブハウス的な音が溢れてくる店にぶつかる。

せっかくだからと入ってみると想像以上にいかがわしい笑

普通に女の子が横につく、、
こういう店は昔日本でも1度連れてかれたけど苦手、、
何を話していいんだか分からない、、笑

でもしけたツラをしていても盛り上がらないので楽しそうにはしておく。
実際この音はオマールスレイマン的な中東特有のサウンドで大いに好み。

実際日本のそういう店より暗躍して売春をしてるのは明らかで、
横に座る女性も決して話をして盛り上がりたいわけじゃない。
するの?しないの?みたいなヴァイブスで気まずい、、笑

好みじゃないとかそういうことではなく、、苦笑、
そういうことをすると音楽的運気が下がると信じ込んでるのもあり、
そっちの鞘(サヤ)は固くしまっておく笑。

まあビールも一本飲んで少々高くはついたが、
社会勉強になったし、ルーミーを売りにした街の暗部を知れたのも良かった笑

そして帰り道で
結婚式の打ち上げ的なブロックパーティーが!

超いい感じ!

下記は記憶が薄いのだが苦笑、
なんだか流れでこんな盛場に来てたようだ。。

日本人が珍しいのか、みんなニコニコで話しかけてくる笑。

そして次の晩にはコニヤを出発。

英語を喋れる人が圧倒的に少なくなってるのを感じ、
緊張感も感じる。

いわゆる昔の上野駅のような東北の地方労働者たちが田舎に帰る、みたいな雰囲気を感じた。

明日はいよいよディアルバクル!

旅は続く

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J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY / NXS /CROSSPOINT)
http://www.nxs.jp/
https://linktr.ee/JAKAM

東京出身。15歳からバンドとDJの活動を並行して始め、スケートボードを通して知り合ったメンバーで結成されたバンドEvilPowersMeの音源は、結成後すぐにアメリカのイラストレイターPusheadのレーベル等からリリースされる。DJとしてもその革新的でオリジナルなスタイルが一世を風靡し、瞬く間に国内外の巨大なフェスからアンダーグランドなパーティまで活動が展開される。 ソロの楽曲制作としても米Grand RoyalからのBuffalo Daughterのリミックスを皮切りに、Boredoms等のリミックス等メジャー、インディー問わず様々なレーベルからリリースされる。2003年にキューバで現地ミュージシャンとレコーディングツアーを敢行したのを皮切りに、その後世界各地で録音を重ね、新たなWorld Musicの指針として、立ち上げたレーベルCROSSPOINTを始動。
2015年から始まった怒濤の9ヶ月連続ヴァイナルリリースは大きな話題になり、その影響でベルリン/イスラエルのレーベルMalka Tutiなどからワールドワイドにリリースされ、DJ TASAKAとのHIGHTIME Inc.、Nitro Microphone UndergroundのMACKA-CHINとPART2STYLEのMaLとのユニットZEN RYDAZ、Minilogue/Son KiteのMarcus HenrikssonとKuniyukiとのユニットMYSTICSなど、そのオリジナルなヴィジョンは、あらゆるジャンルをまたぎ、拡散し続けている。また音楽制作のみならず、映像作品、絵本や画集 のプロデュース、野外フェスOoneness Camp”縄文と再生”を企画するなど活動は多岐に渡る。

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