勝木有香さんと佐藤雄飛さんによる10月20日にno-maにて二人の合同作品展「目眩」。
前編ではお二人のバックボーンと共通の技法であるシルクスクリーンについてでしたが、
後編ではお二人のパーソナルな話から今回の展示会が合同であることならではのエピソードをインタビューしていきます!それでは、どうぞ!!
・開催期間 :2021年10月20日(水)- 10月26日(火)
・営業時間 :11:00-19:00
・場所 :「no-ma」at 渋谷PARCO
・住所 :東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル1階
Period: October 20, 2021 (Wednesday) – October 26, 2021 (Tuesday)
Opening hours: 11:00 – 19:00
Location: “no-ma” at Shibuya PARCO
Address: Rise Building 1F, 13-17 Udagawa-cho, Shibuya-ku, Tokyo
−関西から東京へ来たとのことですが、アーティストで食べていく!みたいなことを決めたタイミングみたいのはありますか?
勝木:小さい頃から絵を描くのが好きだったので、好きなことが仕事になることが理想だとは思っていました。大学に入ってからは実際にアーティスト活動をしている人たちの話を聞いて、好きなことをしていてもいいんだ!と思いました。
もちろん制作をするにあたって制作費とかはかかってくるので、いまは大学の助手の仕事をしながらではありますが、幸い工房もある環境なので制作もできています。
仕事をしながらの活動はハードではありますが、やりがいはあります。
佐藤:僕はいまデザイナーをしながら、アーティスト活動をしているのですが、小学生の時の時点で何か作って生活したいなと思っていました。
根本的に人に喜んでもらえるのが好きなんです。
あと当時は佐藤可士和さんが良くメディアなどに出ている時期で、彼がデザインした携帯電話を小学生ながらに欲しがったりしていて、将来はデザイナーになるのかなと思っていたのですが、人の話などを聞いているうちにアーティストとしてもやっていけるもんなんだな…と思って今に至るような気はしています。
−近しい目標を持っている人たちの話が聞けるのも美大などのコミュニティならではの利点ですね。話は変わりますが、2020年以降、コロナウイルスが流行したことで、多くのアーティストたちにも変化がありましたが、お二人はどうでしたか?
佐藤:人が外に出なくなりましたよね。その影響でzoomでは会ったことはあるけど、実際は会ったことがないという人も出てきました。その人の一部を切り取った部分しか知らないというか、例えば実際に会ってみたら思ったより小さかった、大きい人だったみたいなことってあるじゃないですか?
窓に切り取られた情報みたいな現象が自分の作品と親和性があるなと感じることがあって、
そういう感情を取り入れたりはしていました。
勝木:コロナが流行した時は、まだ学生だったのですが学校で制作ができなくなってしまいました。シルクスクリーンは工房がないと制作ができないので、ずっと家でドローイングをしていました。自然と閉じ込められている環境になってしまったので、今回の展示の作品はキャンバスの枠から飛び出したいけど飛び出すことができない窮屈感のような、その時の感情が出ていて。なので、かなり影響はあったのだろうなと思っています。
−コロナの流行は、確かに二人の作風には深くリンクしそうな事象ですね。
話は変わりますが、お二人とも働きながらアーティスト活動をされているとのことですが、1日のスケジュールを教えてもらえますか?勝手な想像ではハードそうですが…。
佐藤: 1日中作品のことを考えていますね。お風呂とか散歩とかでも思いつけばメモる。それを土日にまとめて案にするという形ですね。
−今日はメモりました?
佐藤:メモってますね(笑)
良いモチーフ見つけたらメモりますね。今日は20枚くらい書きました。
形を書くこともありますしTwitterで見つけた作家や、ソフトで使える技法とか。このメモを土日にスキャンしてXDというソフトで管理して整理して案を作っていきます。
手書きメモとXDで整理したデータ。このデータが今後どのような作品に変化していくのかが気になります!
−制作ペースとかノルマみたいのはあるのですか?
佐藤:油絵とか水彩画を描いている人は何枚とか制作するみたいなものはあるみたいですが、僕は家で作品の案をつくって、人に頼むような形ですね。展示が近づいたら一気に発注という形です。シルクスクリーンには刷り師という人がいて、その人にお金を払ってやってもらっていますね。
余談ですが浮世絵とかも版画なのですが、刷り師とか彫り師に分かれています。
明治時代あたりに一人で全てこなすという流れができたそうですが、基本的には分業も可能です。
−そうなんですね…!てっきりこの手のことは一人でやるものだと思っていました。勝木さんの1日の流れも教えてください!
勝木:私も学校で働いているので19時までは仕事ですね。
ただシルクスクリーンを教える仕事になるので、かなり制作の場には近いです。
生徒からの作品をみて「こういう色の使い方があるのか!」とかの気付きはもらっていますよね。ただそれらのアイデアをまとめるのは仕事を終わってからになるので、8時から案だしを始めて、夜2時から3時までは制作をしているみたいな形です。
さすがに毎日ではないのですが、展示会が近づくとそういう日が増えるというような形ですね。
−夜中の2時まで!!僕なんて家に帰ったらNETFLIXとかYOU TUBEばかり観てる人間なので胸が痛くなる話です!
勝木:常に手を動かさないとみたいのはあるので、生徒に刺激を受けドローイングとかもしますし、日頃は私も電車で移動している時や、歩いているときに作品のヒントになりそうな場所や瞬間を写真で撮りますね。何気なく撮った写真と作品作りにどう関われるか土日に整理するような形です。
勝木さんのメモ代わりに撮っている記録写真とドローイング。曰く「メモを見返して壁に移る木や建物の影に反応していると気付きました。おそらく、そこから作品のサイズ感であったり、インパクト、存在感といった影響に繋がるのかなと思ったりしています。」とのこと。これらはInstagramで@yukaosanpo見ることもできます!
―今回は新作もあるとのことですが、二人で展示会をするにあたり、作品作りに与えた影響などはありますか?
佐藤:ぼくは勝木さんに寄せました(笑)
ドローイングを増やしたりとか、今まではアクリルだったのに、紙の作品を作ってみたり。人と展示会するのって良いなぁって思いました(笑)
勝木:(笑)
でも私も佐藤さんの作品は絵がボケてるというか、形になるかならないかみたいな絶妙な部分があると思っていて、そこに刺激を受けていて、いつもよりかなりボカしました(笑)
あとモノクロの作品も多いですね。(佐藤さんの作品はモノクロが多く、対照的に勝木さんの作品は普段色使いの多い作品が多い。)
佐藤さん、勝木さんの順にお互いが寄せた作品。互いのテイストを守りつつも、かなり統一のとれた雰囲気のものになっています。
−アーティストというと我の強いイメージがあるので、自然と調和が取れているという話は貴重なような!(笑)
今回の作品展ではどういう人に見てもらいたいか?という話と作品に触れて何を感じて欲しいか?を教えてください。
佐藤:全年齢に向けてというのは厳しいと思っていることに加え、今回のギャラリーは若い人向けだと思っているので、今回は若い人に観てもらいたいと思っています。
感じて欲しい話の部分で挙げると、僕の作品は磨りガラスの向こうにモチーフがありそうでないという作品です。ただモノの存在について考える作品は比較的多くて、それらと同じ文脈で作品を観てしまうと「古いタイプの作品だな」と完結される場合も。
ただ僕は、ありそうでないというその先を突き詰めたいと思っているので、その先の展開が伝わってほしいなあと思っています。
勝木:誰に対してというのはないのですが、人によって色々な景色や記憶があって、例えば、旅行に行った時の海や夕日の景色など。自分の作品も見てもらっときに景色として記憶に残って欲しいと思っています。その人の記憶に動いていた”何か”みたいなものが残って、そこから感じる視覚以外の五感を動かせられたらなと考えています。
−最後に今後の展望などをお教えください!
佐藤:写真と3DCGとかで作ったりもするんですけど、3DCGに力を入れているのでNFTとかにも力を入れたいなと思っています。
まだ終わってないのですが、今回の展示の作品作りの過程で課題が見えてきたので、課題には向き合おうと思っています。あとは、せっかく東京にもきたので展示会はガンガンやっていきたいですよね!
※NFT…仮想通貨の技術を活用することで、データに対し個人の保有証明ができるようになる。近年メジャーにもなっているデジタルアートにも親和性が高く、海外ではNFTアートが約75億円で売れたという実例も。
勝木:一つの空間を作品で覆いたいですね。たとえば見る人が作品の中に入れるような空間みたいな…。
壁全体に自分に作品を描くとか、視野に収まりきらない空間をつくっていきたいです。
そうなるとシルクスクリーンではできないので、どういった方法がないかを調べたりしています。
ということで、勝木有香さんと佐藤雄飛さんのインタビューでした。
すでにアート界隈では注目されているお二人だけに、”何かが起こる前夜”みたいなものに立ち合わせてもらえたような気がします。
作品とは直接関係する話ではないですが、普段はコツコツと働きながらも空いた時間で作品作りに勤しむというエピソードは若手のアーティストならではのエピソードだと思いました。働き方改革とかライフワークバランスなどのキーワードが叫ばれる時代ですが、好きなことのために生きていくために寝る間も惜しまずに今日を生きながらアートに取り組むガッツは”パネエ!!”と思いました。
(ちなみに二人はサラリと話していたので、そこまでハードに感じているようには見えませんでしたが)