THAT IS GOOD THAT IS GOOD

音に導かれる旅 パキスタン 荒野の中に見る未来9

パキスタン 
2023年2月13日~3月7日

ペシャワール

ココ、ペシャワールでのレコーディングをある程度やり切った感もあり、
今日はスーフィー(イスラム神秘主義と日本では訳される)の
セレモニー(儀式)に行ってみようとティプから提案された。

今回の帰国までのスケジュールを考えると、どちらにしてもカラチには戻るし、
今週末は先日カラチで自宅コンサートを開催していたレーベルHoniunhoni のオーナーの
ダニヤルが関わる野外フェスもあるみたいだし、
実質今夜がペシャワール最後の夜になる。

日々録音しながらも、同時進行で編集もして、ヴィジョンを堅めていく。
その作業はノートPCと睨めっこをどれだけするかなのだが、
ホテルの部屋に居て、ヘッドフォンをして音の中に没入すると、
ココがどこだか分からなくなる。
ヴィジョンに追いつく為にも直感を研ぎ澄まさないといけない。

そのガイダンスやヒントはスクリーンではなく目の前の現実にある。

そういえば、このホテルには数部屋あり、バルコニーというにはあまりにも殺伐とした光景しかないベランダで
夜中録音から戻り、スタッフが淹れてくれた素晴らしく美味しいチャイを飲みながら、
タバコを吸っていた時、ある家族と何回か交流があった。

彼らはアフガニスタンから旅行で来ているらしいが、滅多に聞けない生の声として、現在のカブールの状況を聞いてみたら、
やはりタリバンに実質完全にコントロールされてる状況で、酷い、と旦那さんは言っていた。

おそらくこの様なホテルに泊まれるだけ、あちらでは裕福な方なのだと思うし、
それは映画『君のためなら千回でも』の主人公の父親のように
西欧的な仕事、もしくはスタンスがあって裕福だったのは間違い無いだろう。

ここでアフガニスタンの近代の現代の歴史を述べるのは割愛するが、
2001年9月11日以降のソコは、まさに激動。
西欧諸国からの理不尽な空爆、破壊、殺戮がいきなり日常になり、
その後の占領。
政治、社会の破壊、解体。

おそらくその時期に多感な少年、少女たちは、
肉体的なことは当然として、精神的にもさぞや大変だったことだろう。

現実への価値観が塗り替えられ、どれを信じるべきか分からなくなる、、
というのは自分も体験したことは無い。

何が正しいのか、
つまり『正義』とはどこにあるのか?

それ以前は、イスラム的な価値観、つまり宗教、それは信じ切ることであって、
いきなり圧倒的な武力で制圧してきた外国人たちが、
『お前らの信じてきたものなど、テロリスト、つまり悪人たちのまやかしだ!』
と真逆の世界を叩きつけられるのだ。

まさに幸い、多くの国民の意識はその圧倒的な暴力には屈せられることはなく、
西欧諸国が撤退した後、まさにタリバンというイスラム神学者たちによる社会の復興を望んだのだ。
以前よりも。

それは当然全ての人たちではない。
特に9.11以前、『豊かな』生活をしていた人たちにとっては、最悪なことだろう。

しかし、『裕福』でない人たちにとっては、イスラムが持つ社会扶助的なシステムは、
まさに共産主義的なものがあり、貧しい人たちにとっては、頼りにならない政府の役人よりも、
クルアーンをマスターしたイマーム達の教えや、特にその『施し』に頼らざるをえない現状なのだと思う。

そのような状況はアフガニスタンだけに限らず、世界中、特にアフリカでは顕著だ。

またイスラムだけではなく、かつての?南米はスペインの植民地だったのもあり、
カソリック系のキリスト教の牧師と奴隷商人、軍隊がセットになって、現地人を『改宗』させていった。

その中で、メキシコなどは、土着信仰と混ざり合い、マリア信仰が強くなったり、
その地域に根ざした宗教媒体が、その地域の重要なコミュニティーになり、
経済的にも精神的にも貧困層の幇助(ほうじょ)となっているケースは多い。

当然、そこに『闇』は常に存在するのだが、それによって『光』も当てられたのだと思う。

この世界に存在する99%の『国家』はその土地の『財閥』つまり、王族、きつい言い方をすれば『制圧者」達の作ったもので、
民衆が本当に作り上げた国は今現在でも『キューバ』だけだったのかもしれない。

そのキューバ革命以降、日本も含め、1960年代は世界中で革命の風が吹き、
各地で『運動 MOVEMENT』が起きた。

それをどうにか封じ込めようと西欧諸国、つまり、ロスチャイルドやロックフェラーなど
金融財閥からの軍事的(ベトナム戦争が顕著)にも
精神的にも『反共』『赤狩り』キャンペーンで『社会主義』を弾圧した。

しかし、世界中で若者達は、真の『民主主義』を望み、数十カ国はそれを、ひとまず、成功させた。

今回のパキスタンもそのうちの一つだ。

しかし宗教と同じように、政治、社会にも『光』と『闇』は存在する。

完璧な社会、世界は存在しない。

今も発展の途中なのだ。

ともかく、日本とは全く違う、この特殊な環境からインスパイアを得るべく、
実務は後回しにして、いざ現実、目の前にあるリアルライフに!

早速、ホテルの前に立つ銃を抱えた男の前にある車のフロントガラスにこれが。

気になる。。

ともかくティプの家の近くの駅まで、またもバスを使って向かう。

ここペシャワールでの最期の日と思うと全てが愛おしい。

ヒジャブに関してネガティブに思う人も西欧社会では多いと思うが、
余計な誘惑も無く(これでも完全では無いが笑)、あくまで女性と男性の歴然とした『違い』を見せられ、
自分が『男』として、パシュトゥーン男に負けないようにパシっとしてないといけないな、と思うだけで笑、
もはや、何か、具体的には家族にちゃんと『守られている』、そして『守るべきものがる』という
意識の顕在化した象徴の衣装であるヒジャブ姿があるこの日常、この光景がラブリーに感じてきた。

近年、新大久保で若い女の子が、金の為に平気で身体を売っているらしいが、
娘がいるわけではないが、守られていないことに勝手に悲しみを抱く。

ヒジャブをさせたい、とは思わないが、女性はある意味男より重要で、だからこそ、
太古から女性を戦時中でも男と区分けして、保護するというのは、人類全体としての最低限の倫理になってきたはずだ。

女性はイコールでは無いが、母になる可能性が多いわけで、母は全ての人間にとってのルーツであり、
それは生命体としての倫理なのだろう。

子供は未来であり、希望であり、それを生み出す者としての『母』は
まさに大いなるものだと思う。

そして、余談だが、うちの息子が2-3歳の時に何かのきっかけで
『パパはタオのスーパーヒーローだから』
と言われ、ハっとした。

そうか『スーパーヒーロー』でいないといけないんだ笑、と。
まあ悪く無いなと笑。
全人類の、なんてのは無理な話だが、自分の子供にはそう思われていたいな、と思った。

ともかく待ち合わせの駅に到着。
10分ほど待つが現れないのでWatsAPPで電話すると、駅の反対側だと言う。

こちらの聞き間違いらしく、軽くキれられるが、
この感情が常に顕(あらわ)なのも、もはや愛おしい笑。

ということでいつものようにティプのバイクの後ろに跨り、奥さんから頼まれた買い出しに付き合う。

1

https://www.youtube.com/shorts/53-kkXUFFdg

この店の人たちも親戚らしいのだが、(どれだけ親戚多いの?って感じだが笑)
なんとここの店主のお爺さんが、日本人として、初めてムスリムにした人だと言う。

その時Wikiも見させられたのだが、今その詳細を見つけられず、改めて検索してみたら
日本人最初のムスリムはこの人とされている様だ。

https://www.city.hachinohe.aomori.jp/soshikikarasagasu/shakaikyoikuka/bunka/1/5464.html

日本との関係も深いトルコ、イスタンブールにて。
八戸の人らしい。

ネットアーカイブ上ではパキスタンの人では無いことになっているが、それが真実とも言えない。

歴史は一つでは無い。

『オフィシャル』とは違う歴史もあることは、よくあることだ。

ともかくティプは『俺がお前のシャハードをやるかもな』と
ニヤっとされたのもラブリー笑。

そんなブラザーティプが改めて、マーケットを色々案内してくれ、
お互い拙い英語力なりに、彼のコメントから、パキスタン、ペシャワールの『文化』、
生活のリアリティーを感じさせてもらった。

2

https://www.youtube.com/shorts/o6itMFLTvQI

日本も含め、御多分に洩れず、多くのこの様なケバケバしいプロダクツは中国製とのこと。

3

https://www.youtube.com/shorts/2jtLnKIaAXA

それでも、アフガニスタンを彷彿とさせるパシュトゥーン人の太古から続く、食文化の片鱗を感じられたり、
目が合えば、胸を当て、喋れなくても伝わる、『礼儀』を弁えた(わきまえた)、
おおらかで、威厳のある、その奥深い文化の歴史を感じる。

外国人はおそらく全くいないに等しく、
子供や若い子達は奇異の目でこちらを見るのだが、
年配の人たちの方が、かつてペシャワールが西欧人など、外国人が多く訪ねてきた時代を知ってるからか、
平然としていて、ある意味懐かしさもこちらに感じていたのかもしれない。

1970年代くらいは、日本人のトラベラー達も数は少ないかもしれないが、訪れていたのだろう。

6

https://www.youtube.com/shorts/5rCR77thjoE

自分の中では上野のアメ横を思い出す光景なのだが、
やはり『古代感』のレベルが違う笑

現代でも外国人にとってのアメ横はその『古代感』を感じる部分もあるのかもしれないが、
何せ日本は京都以外、第二次大戦で東京も勿論、大都市のほぼ全てを焦土化されているので、
その『古代感』はまさに残像でしかない。

決して、莫大な金が動いている感じではないが、
それでも豊かな感じがする。

4

https://www.youtube.com/shorts/XT4l-WFYz4o

ティプは、電気製品などに日本製のプロダクツを探そうともしてるみたいだが、
全く無く、残念ながら笑、中国製などしか無い。

日本の製品のコストの高さは間違いなく『地代』の高さから来てると思うが、
その『地代』の深い問題点も考えたが、この中国製品の全世界シェア感にも改めて考えさせられた。

5

https://www.youtube.com/shorts/8kLLw3q1i9E

ここはもはやオーナーも中国人?

下記は『まんじゅう』みたいなもの?

一通り案内してもらい、帰国直後のパーティーのお土産にもいいかなと思い、スナック菓子的なものを購入した。
(下記の写真の上部のもの、辛い、という意味だけで無く、スパイスを感じる、と言う意味でも美味しかった)

ひと段落し、どうしてもサンダルに目を行かせたいのか笑、工場?にも連れて行ってくれるらしい。

7

https://www.youtube.com/shorts/k8RkED-_EIs

道も酷いし、上野の近くの山谷的な?ゲットー感も感じる。

確かに古来の(現代でも?)日本でも革製品、肉の解体場、など汚物と言われるものに関わる人やエリアは
『部落』と言われ、ゲットー感がある。

だからと言ってそこに住む人たちが『穢れ』ているわけでは無いと、強く思うが、
ある意味そのシステムも万国共通なのかもしれない。

8

https://www.youtube.com/shorts/zfDSwkp5XnA

詳しいことは聞いていないが、ティプが経営するサンダル(靴)屋の直接関係してる会社?で
完全に全てを説明できていた。

横にある牛乳屋?も全員知っているらしく、なぜかそこのスタッフと記念撮影。

まあ日本人で、というか外国人はまず来ないだろう笑。

その流れで、近くにあるモール、と言うにはあまりにも簡素と言うか殺伐とした?
建物に『凧』発見!

というか凧の卸問屋的な店だらけ。

ちょっと機嫌良くなってるのを見て、写真撮ってやる、と記念撮影的な笑。

9

https://www.youtube.com/shorts/FkOTQ9awc0Y

そしてここの人たちも親戚らしく、完全な部族社会にある意味感心笑。

プロダクツという割には素朴というか、粗雑というか笑、人間味があるというか、
親しみが湧くというか笑。

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https://www.youtube.com/shorts/XiSgbOiPlCE

アツく凧について語るティプに胸熱、笑。

この光景もラブリーだった。

日も暮れ、いよいよスーフィーセレモニーにバイクで向かう。

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https://www.youtube.com/shorts/fPE5XPbPo1M

ちなみに全く右も左も分からない笑。
完全なる『委ね』笑。

相変わらず観光客には全く向いていない笑、猛々しいストリート。
最高です。

そして、なんだか状況が理解しきれていないが、まず集会場的な場所に到着し、自分よりは(おそらく)年配な方々から、
宗教的な話、特に、当然イスラムについての関心の深度を試される、というか。

当然、自分はそれに関心があるというか、正式なムスリムとはしていないが、
アンオフィシャルに笑、その知識と精神性を実生活に取り入れて10年近く経つので、
多少の理論武装もしている。

しかし、自分はアンオフィシャルだ、というのは正直に伝えている。
しかし、その『正式』になる為に必要な言葉。

ムハンマド(師)は最期の預言者

アッラー以外に神はいない

というのに全く異論は無い。
と、それも伝える。

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https://www.youtube.com/shorts/zb6Uygp1Aa0

でもここまでガチな状況だと、ちょっと怯(ひる)みつつ。。

どこか違う都市から来られたこの写真のセンターに立たれる老イマームは英語も喋れ、
少し会話をした。
アメを数個くれたり笑、すごく感じのいい人で好印象。

下記はまたティプの親戚?と記念撮影。

『今日、日本人と会った!』みたいに自慢するのかも?笑

そしてこの集会所兼モスクから移動し、
メッカ(サウジアラビア)の中心に位置するカーバ神殿に被さっている布の一部があって、
大層ホーリーな部屋?に連れていかれる。

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https://www.youtube.com/shorts/pYakT1ZeJC4

黒と金の、DOPEである意味サグい感じにもアガる。
というか同時に恐縮。

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https://www.youtube.com/shorts/pWvIkbg4LN8

ティプが神妙な面持ちで写真撮ってくれ、と言い出すこともラブリー。

そして、今晩最期のメインイベント。

ここにも高名なイマームが来て説法して、写真左の人がパフォーマンス?というか、するらしい。

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https://www.youtube.com/shorts/1HL0yFB22ac

入った瞬間からすごく政治的な印象も受ける。
地域のコミュニティーセンターというにはあまりにも揺動的というか戦闘的というか。。

ちなみにこのイマームの声とヴァイブスはあまり好みではなく、
言葉の意味はわからないけど、拒絶感を感じた。

しかし、

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メインアクトの人が登場すると、、
明らかにホーリーな感じで、
政治感というか雑念というか、、澱んだものがなく、
ある意味音楽的に聞こえてくる。

これはクルアーンやアザーンなどから音楽的な『美しさ』を感じるのと同じ感覚だ。

ある意味これが醍醐味であり、
意味を超えた『美しさ』はまさに絶対的だ。

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https://www.youtube.com/shorts/Mt7_J8obR7U

おそらくクルアーンからの一節を引用したり、
ムハンマド(師)が残した言葉『ハディース』からの一節も使われているのだろう。
ある意味、ラップやダンスホールのライブの様にキラーワードでみんながブチ上がる。

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https://www.youtube.com/shorts/XqR20hNNGVU

冷静に見ても、オケのバンドやトラックも無く、
声と、異様にかかったリヴァーブとディレイで完全にソロアクト、完全アカペラって、凄すぎる!

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https://www.youtube.com/shorts/tWnaQuyvR5g

約3時間この人だけで最後までやるらしい。
自分にとっても画期的な笑ライブというか。。

もちろん『イスラーム』という共通認識が深くあった上での
コール&レスポンスだが、その『ホーリー』さ、
つまり『ありがたいもの』としての言葉の、音声の、音の、人の声の、
その凄みというか、可能性というか、、

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自分も意味は理解できないけど、理解できるというか、、
いわゆる『洋楽』を聞くことで鍛えられた『感性』が疼(うず)きまくる。

『音』だけで恍惚としてくる。
ましてやキラーワードの引用の仕方のヤバさや、タイミング、響き、メロディーのスペシャルさが理解できれば、
この男達のアガりっぷりは共感できる。

既に自分もちょっとブっ飛んでしまったのは間違いない。
当然完全にシラフでだ。

しかし、ここから、とんでもない事態が起こることは全く、
微塵にも思わなかった。。

このメインアクトが深夜2時前に終了し、そこにいたみんなで食事をするということになり、
ありがたく頂く。

状況的にティプと少し離れた場所に座って食事をすることになったのは、因果だったのかもしれない、、

ともかく食事が終わり、ホテルの方までバイクで送る、ということになり、
当然外国人で珍しい日本人。
そこにいた百人近い人、全員がこちらを注目していた。

その中にとりわけ鋭い視線があったことは気づく術もなく、、

そしてバイクの後部座席に座りながら、携帯電話を探す。。

あれ、、無い。。

あるべきところにもなく、一応全てのポケットを探す。。

走行中だったが、ティプに携帯電話が無いことを伝える。
一応持っていたPCを入れたリュックの中もバイクを降りて探す。

無い、、、、

えーーーー

まじで。。。

エーーー!!!

明日からカラチ、、
飛行機のチケットも数日前に取った。。

PCには履歴などから、どうにかすることは出来るが、、

でも携帯にある写真や動画、、
こまめにPCに移動してるつもりだが、、
SNSなどのやり取りも不便極まりない!!

最悪な状況が訪れたのは間違いない。。

ともかくティプがさっきの場所に戻って探そうと言ってくれる。。

ただでさえ目立ってたのに、携帯無くした、というのも小っ恥ずかしいのだが、
背に腹は変えられず、、
とにかく向かう。

もうすでに客人達の多くは去り、コアな関係者三十人いるかいないか、、

ティプからの説明を聞いて、

みんな、エーって感じで、会場内を必死に探してくれる。

しかし、全く見つからず、、

英語を喋れる人はティプも含めて、三人くらい。。

ほとんどは会話不可能ながら、こちらも彼らのやりとりを直感で把握しようと努める。

とにかく、客人の、しかも外国から来た人のものがここで盗まれた、となってはとても不名誉なことだし、
そんなことはあってはならないし、絶対無いだろう!とみんなピリピリしている。

この日本人、ボケてんじゃないの?という自己責任感も感じたり、
とにかく心苦しい、、
1時間近く、そこでみんながガチャガチャ討論を重ねている。。

時は午前2時半過ぎ、、

正直99%、個人的には諦めかけていた。。

しかしティプが色んな人たちとアツく自分の為に議論してるのを見て
自分から、『ギブアップ』を言えない感じもあるし、
心の中で『アッラーアクバル 神は偉大なり』と藁にもすがる想いでその言葉を唱え始めていた。

奇跡は起きるはずだ、
と1%でも信じたかった。

その中で数少ない、またティプの遠い親戚的な人で、英語を多少喋れて、
自分と同じiPhone所持者の人が、
あれ、PC持ってるって言ってたよね?
と尋ねてきた。

3時過ぎ。。

確かGPS機能で、PCとiPhoneが紐づけられていたら、Wifi繋げれば見つけれるんじゃないか?
という提案を出してくれた。

紐付けした記憶も薄く、機械オンチな自分には依然不安な状況なのは変わらないが、
周りの若者達がパシュトゥーン語であーだこうだティプやその人に伝え、
色々PC内でいじっていくと、なんと紐づけられた携帯が、PC上のGoogleマップ上に点滅してる!!!!!

みんなで『あったー!!!!!』みたいな妙な興奮状態!

この集会所から歩いて10分もかからないところにある!
となり、
精鋭部隊7-8名でiPhone捜索隊が結成され、
夜のペシャワールの雑踏の中に突入!

自分が持つPC上のマップを見ながら男たちがiPhoneを探す、というありえない、奇妙な光景に
内心笑ってしまうところもあったが、それでもこれで携帯が無かったら、
マジで面倒なことだし、
とにかく『アッラーアクバル 神は偉大だ!』と
信じるしかない。

そしてその点滅してるエリアに到着。
結構スラム感が漂う、いわゆる貧民エリアなのかな。。

当然真夜中で寝静まっている。

捜索隊の中の数人がここの土地勘があったので、その点滅エリアすぐ近くに接近。
完全に近い!

どの家に??

全員興奮状態、笑。

はっきり言ってエンターテインメントとしては相当スリリングな状況、笑。

聖人だか浮浪者だかスーフィー系の老人がその近くに居た。

みんなでその老人を問いただす。

言葉は分からないが、妙なきな臭さ。。。

思えば、あの会場で見た気もする、、

ティプが取調べ警官の様にボディーチェックするが見当たらない。

しかし、PC上のマップには携帯は点滅してる。

例のiPhone所持者の人が自分のPCとの距離からその細かい場所を探る。
すると、
ごみ溜め場のような一画に行き着く。

そして携帯を鳴らすと、かすかに振動音がゴミの中から聞こえる!

そして振動音がするビニール袋を発見!!!!!

その浮浪者のジジイは逃げようとする、、、

丁寧に携帯カバーは外し、それをどこかで売るつもりだったのか、、、

ともかく会話は理解不能だったが、ティプがそのジジイに1発パンチを食らわせていた笑。

自分は2011年のセネガルのごとく、とにかく自分自身は穏便にいるのがアウェイでは賢明だと思っているので、
静観していたが、その老人は警察には突き出さない、とのこと。
異論は無い。

おそらく経済的に貧しい男なのは間違いないし、
慈悲の心は捨ててはいけない。

とにかく任務完了!!!

まさに
『神は偉大なり!』

奇跡は起きたし、関わってくれたメンバーに感謝しかない。

集会所に戻り、そこに居た人たちに捜索メンバーが興奮しながら語ってるのもラブリーというか、、、

ともかくもう朝方になっていた。。

そこから、ティプがうちで飯食って行こう。
と。。

こんな明け方4時前に、、

昭和な亭主に付き合ってくれる優しい奥様にも感謝。

朝っぱらのビリヤにがマジで沁みる。。

感謝しかない。。。

そしてバイクで送ってもらう途中、ホテルの近所のタクシー運転手の定食屋みたいなところで、
最後にチャイを飲もうと提案した。
当然こちらのおごりで笑。
初めておごった笑。

奢られっぱなしで、どうやってこの借りを返したらいいのか分からない。

こんないい奴はいない。

本人も『イスラム教徒』として『善行』を遂行したのだと思うし、
天国に行く為だという意図があったとしても、感謝しかない。

彼のいないペシャワールは存在しないし、彼が自分にとってのペシャワールだ。

そう、最高にアツイ、あったかい場所。
タフだけど、奇跡が起きる場所。

中村哲さんからの流れはこんな男と会う為だった。

上記は彼からもらったブルゾン??(昔のヤンキーウエアみたい笑)
まず日本では工事現場にいるおっさんしか着ないようなこのジャケット。
最高のお土産。

ホテルに戻ったら完全な朝。
ティプが帰ったら動画とか全部送ってくれと、割とさっぱり。
そういうしみったれ無いところも最高。

だよな。
また会うだろう。
心の底から彼と家族の健康と繁栄を祈る。
ワッサラームアレイクム

奇跡を通過した朝は当然清々しい。

とんだ事件もあったが、なんて人生は凄いものなんだろう、と気づかせてもらった。

諦めちゃいけない。

ホテルのフロント?で清算もし、ついでにタクシーを呼んでもらい、
ペシャワール空港へ。

無事にゲートに入り、睡魔に襲われながらも、このレアな光景を目に焼き付けようとする。

搭乗アナウンスが鳴る。
割と乗客も多く、その中には完全なモンゴロイド顔のハザーラ人達の一行もいる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハザーラ人

本当に日本にたくさんいる顔!
カラチまで何しに行くんだろう。。

遠く離れた場所に住む、
割と遠くない世代で繋がっていそうな一行の旅の成功も祈った。

久々のカラチ。
これから今回のパキスタンでの旅、
最終章。

旅は続く

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J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY / NXS /CROSSPOINT)
http://www.nxs.jp/
https://linktr.ee/JAKAM

東京出身。15歳からバンドとDJの活動を並行して始め、スケートボードを通して知り合ったメンバーで結成されたバンドEvilPowersMeの音源は、結成後すぐにアメリカのイラストレイターPusheadのレーベル等からリリースされる。DJとしてもその革新的でオリジナルなスタイルが一世を風靡し、瞬く間に国内外の巨大なフェスからアンダーグランドなパーティまで活動が展開される。 ソロの楽曲制作としても米Grand RoyalからのBuffalo Daughterのリミックスを皮切りに、Boredoms等のリミックス等メジャー、インディー問わず様々なレーベルからリリースされる。2003年にキューバで現地ミュージシャンとレコーディングツアーを敢行したのを皮切りに、その後世界各地で録音を重ね、新たなWorld Musicの指針として、立ち上げたレーベルCROSSPOINTを始動。
2015年から始まった怒濤の9ヶ月連続ヴァイナルリリースは大きな話題になり、その影響でベルリン/イスラエルのレーベルMalka Tutiなどからワールドワイドにリリースされ、DJ TASAKAとのHIGHTIME Inc.、Nitro Microphone UndergroundのMACKA-CHINとPART2STYLEのMaLとのユニットZEN RYDAZ、Minilogue/Son KiteのMarcus HenrikssonとKuniyukiとのユニットMYSTICSなど、そのオリジナルなヴィジョンは、あらゆるジャンルをまたぎ、拡散し続けている。また音楽制作のみならず、映像作品、絵本や画集 のプロデュース、野外フェスOoneness Camp”縄文と再生”を企画するなど活動は多岐に渡る。

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