Artist Interview No.8 - Johnny Akihito Noda- Part 1
12月15日〜12月22日まで行われる4人展であるPARCO no-maで『Do No Ko Vol.2』。
最後の4人目となる第4弾は、Johnny Akihito NodaさんことJohnnyさんへインタビュー。
ロウブロウアートの影響を受け、独自の表現をするアーティストです。
ロウブロウというのはアメリカから発祥した、アンダーグラウンドコミックやパンク、ホットロッド(アメリカの改造車)などの要素が入り混じって発生したアート・カルチャーです。
グロ・エロ的な表現がありながらもコミック的に表現がされており、どこかポップな印象もある不思議な世界観を持つジャンルです。
文献によると、現在は各国の地域色の高いサブカルチャーと融合し、独自の発展を遂げ細分化を遂げつつあることから、評論家や専門家によっては広義なアート分野を指すモノとして捉えられることもあるジャンルですが、
Johnnyさんは、1960年代からアメリカで勃発しはじめ、1980年以降、ロバート・ウィリアムスによって改めて言語化されたロウブロウアートの影響を直系的に受けているアーティストです。
前編では、作品のお話をお聞きしつつ、ロウブロウとは?みたいな話も聞いてみました!
それでは、どうぞ!
2021/12/15-12/22
A group exhibition
D o N o K o ? Vol.2
Curated by TOKYO URBAN ART , GReeD TOKYO
at @noma__official
ARTIST /
END
MAI NAGAMOTO
Johnny Akihito Noda
YUSUKE BONSAI KID
−まず絵を見て思ったのが、すごくストレートな線でムラがなくグラフィックとしても綺麗で、単純に技術の高さにも驚きました。
シンプルな構成ほど、実はムラが目立ってしまったりするじゃないですか?
完璧主義なタイプなのかもしれないですね。細かくやらないと気が済まないので。
はみ出しや塗りムラとか気になって仕方ないので、時間はかかりますが、丁寧に描いています。
−こういう技術を得る過程は苦労しました?
苦労とは思ってないですが、まだ満足はしていないです。
アメリカの憧れているアーティストたちの画集とかを見比べると、目指している描きたい絵からは、まだまだ遠いな!と感じますしね。
−ちなみに絵は完全に独学なのでしょうか?
そうですね。誰にも習ったことがないですね。絵を描き始めてからは、ずっと独学で描いています。
始めた当時は会社員だったので、会社から帰った後はもちろん、休日もずっと描いていました。絵を描き始めた当初は大須(名古屋市中区中心部の地名)の人たちが、外国のカルチャーをフューチャーしたイベントに出店するのについて行くようになって、そのうち自分でブースを申し込んで出店したりして、絵を見てもらう場所を作っていきましたね。
−キャラクターたちのインスピレーションなどはあったりするのでしょうか?
実はキャラクターを描くようになったのはここ2、3年の作品で、それより前はモンスターなどの絵が中心でした。その延長線上ではあるのですが、Tシャツのデザインなどを手がけさせてもらうようになって、お客様からキャッチーな作品の要望などもあり、可愛い方の傾向が強くなってきてきた形です。勿論モンスターも描きますけど。
アメリカのロウブロウやポップ・シュルレアリスムは、掘り下げていくとカートゥーンなどにも行き着くのですが、確かにミッキーやバックスバニー、キャスパーみたいなカートゥーンのキャラクターを自分自身も好きだなと思います。だからアメリカの影響は大きいですね。
あとは日本のウルトラマンの怪獣や妖怪の影響も入っていると思いますし、遡れば少し変なモノ、例えばハニワとか土偶とかの造形にも影響されていると思います。
Johnnyさんの絵はキャラクターが大きく出てくるのが特徴だと思いますが、キャラクターたちには設定はあるのでしょうか。
依頼があって描くキャラクターはそこまで細かく決めてないのですが、自分のキャラクターについては設定を考えていますね。最近のメインのキャラクターたちにはありますよ。
ミーティーは血を垂らしてお肉を食べていて、残酷そうに見えますけど悪いことをしているわけではなく自然な行為なんですよね。生きるために食べている訳ですから。
このキャラクターたちは良く登場しますね。設定などがあれば教えてください。
ネズミのキャラクターは森ネズミのマイス。
こいつはハッピーマイスというフルネームで、いつも幻覚キノコを食べてハッピーになっていると言う設定です。
どこか毒っ気がありますね (笑)
でも奴はハッピーですね。
キノコでとにかくハッピーな気分になっていて、森に住んでいます。
ドブネズミのライムですね。街に住んでいる奴でタバコが大好き。
僕もタバコが好きだからというのも投影されています。
こいつはワイルド・ミーティー。女の子でお肉が大好き。
特にメッセージ性を意識しているわけではないのですが、スーパーとかパックで売られているお肉は、肉らしさがないというか、生き物だったという事を考えさせないようなところがあると思っていて…、アメリカではそういうものに反対する人もいて、僕が一時期住んでいたサンフランシスコは特にヴィーガンの人も多い地域なので、僕自身の思いやそういう人との交流というのも影響していますね。
みんな可愛いらしい造形をしている一方、触ろうとするとイタズラをしてきそうな雰囲気がありますよね。
みんな悪気はないですよ(笑)
日本や海外のいわゆる妖怪とかも、ちょっとおどけている様子が魅力的に感じますよね、そういう影響があってどこかヘンテコリンな造形になるのだと思います。
ミーティーの話で少し、片鱗を感じましたが、実は作品に対してメッセージがあったりするのでしょうか?
エネルギーは込めますけど、そこまでの意味は込めていないですね。
作品に社会批判のメッセージを込めるなどという行為に対しての憧れはありますけど、今は単純に、見ための印象が可愛い、キレイとか、見てくれた人にハッピーを感じてもらう…とか、そういうことを考えて作品を制作しています。
ロウブロウを学ぶためにアメリカに住んでいたとプロフィールで拝見しました。その経験は、どのような形で反映されていますでしょうか?
そうですね…。
アメリカに住んでいる時に、何を描いて良いか分からなくなって絵が描けない時期がありまして、その時に左手で描くことを初めてみました。
左利きではないので、なかなか上手く書けないのですが、そこから新しいものが生まれてくるのでは無いか…と考えて、それを書き溜めて、最後は右手で描き直す。これらの絵はそういう作品ですね。
あとは、アメリカの自然からは影響を受けました。
よく背景として登場する星空や山は、アメリカのマウントシャスタを見た時の影響が大きいですね。
また、アリゾナに行った時のグランドキャニオンにも影響されました。
Johnnyさんから送られてきたアメリカの景観の写真たち①
背景の自然とかはデザイン化されて描かれていますが、かなりコダワリがあるのですね。
そうなんですよ!アメリカの荒野とかも特に大好きで!
なにもなくて宇宙的な雰囲気があって「ここは火星?」みたいな場所や光景が、アメリカでも少し郊外へ出かけるとガンガン見られるんです!星空も本当に銀河が動いているのが感じられるような光景で、「ああ、自分も宇宙の中にいるのか!」なんて実感するわけです。マウントシャスタもわざわざ新月に合わせて見に行っていましたね。
ぜひ皆さんにも行ってもらいたいです。
Johnnyさんから送られてきたアメリカの景観の写真たち②
近くに行く機会があれば、必ずチェックしたいと思います。他にも影響でエピソードはありますか?
ミーティーのキャラクターに関する話の中でヴィーガンに触れましたが、当時サンフランシスコのオークランドに住んでいて、そこはヴィーガンだけではなく、自然への思想みたいなものを持っている人たちが多くて、それらからの影響もあると思います。
僕のキャラクターは基本的には服を着ていなくて、服を着ていてもただの布切れのようになっています。機械的なものを描かないというか、原始的というか…。
単純にそういうのが好きだから、というのもありますけどね。
−ありがとうございます。
話を変えますが、1日の生活スケジュールとかを教えてもらってよろしいでしょうか?
もうグチャグチャですね(笑)
手が進む時は朝を通り越して昼までぶっ通しで描くこともあれば、夕方に起きて夜に描くとかもよくありますし。描き始めると本当に社会から断絶してしまいますね。
二週間まったく家から出ないこともありました。乗っている時に描くタイプで、逆に描けない時は本当に描けないんですよね。
そういう習慣を絶対に直したいなと思ってもいるのですが (笑)
展示の前になると生活が完全に崩れちゃうことが多いので、だから描ける時は少しでも描いておくようにしています。
−たしかに終わりの境目を見つけるのは難しい作業ですし、モチベーションというか感覚に左右されるものではありますよね。
ただし期限がないと描かない…ということも自分でわかっているので、定期的に展示入れるようにしています。
このタイミングから描き始めると間に合う…みたいなことを、自分の中でなんとなく分かっていますよね。どこかで計算しているんでしょうね(笑)だけど本当にギリギリですよ。搬入の30分前とかに完成するみたいな。
基本ダメな人間ですね(笑)
−どこか計算しているのですね(笑)ちなみに描いている時は楽しいと感じるタイプですか?
本当に集中している時は楽しいですね。
自分のコンディションも全て揃って、色も自分の出したい色を出せている時は楽しいと感じますよね。
ただ自分が思っているものとズレてしまっている時は、本当に辛いです。でも本音を言うと、基本的には「面倒だな」とか思いながら描いています。
多分、「小さい頃から絵が好きで、好きで…!」みたいなタイプじゃなくて「あんなものを作りたい、あんな絵を描きたい」みたいな憧れから始めたタイプだからかもしれません。だからこそ、自分の思っていたイメージよりも良い作品ができた時は、超気持ち良いですね!
それがあるから描いていられるのかも。
−逆に描かない時は何をしていますか?
基本寝ていますね(笑)
映画を観るのは好きですけど、時間の制約がある時は集中できないので観ないです。基本は何もしないですし、もともと趣味がないのだと思います。そんな人間だからなのかサンフランシスコにいる時は、サンフランシスコから北に車で5時間かかるマウントシャスタに行って焚き火をしていました。
ずっと焚き火を見つめるという(笑)
−それは素敵な体験だと個人的には思いますよ!
日本に帰ってからは、同じようなことができる場所を探そうと思いつつも、ずっと絵を描いていて、焚き火をしたいなと思いつつも、場所を見つけられていないという。
気に入った場所があれば、すぐにでも行きますけど。でも同じ場所に行っても1回目で味わった感動とは、なかなか同じ感覚になれないので、もう一度同じ体験を味わいたくて何回も行ってしまう…と言う様なことが多いですね。
–話が変わって教えて頂きたいことがあるのですが、ロウブロウと密接にあるアンダーグラウンド・コミックスの存在について、僕は名前と存在、そしてカウンター・カルチャー的な存在なのは漠然と知っているのですが有名なものはあるのでしょうか?
ザップ・コミックスですね。
その中にロウブロウの元祖的な存在になったロバート・ウィリアムスもいました。
60年代にザップ・コミックスに描いていた人たちはロウブロウのレジェンドたちです。その後80年代あたりにロバート・ウィリアムスが「The Lowbrow Art of Robt. Williams.」という本を出すわけですけど、意味としては「ロバート・ウィリアムスの無教養なアート」で、そこからロウブロウが始まるわけです。
−ロウブロウ・アートと言えばアンダーグラウンド・コミック以外にもカスタムバイクやホット・ロッドがルーツにあるものだと思うのですが、ご自身は乗られたりはしますか?
20代の前半頃は、免許を取ってカスタムバイクとかも乗っていましたけど、知り合いにカスタムをまとめてお願いすると、めちゃくちゃな改造とかするんですよ…。
それで、これはちょっと「死ぬかも!」と思って、辞めました(笑)
前編はここまでです!
次回はサンフランシスコのエピソードや、ご本人のルーツなどを深掘りして情報をお届けいたします!
文:THAT IS GOOD 編集部 古賀
TEXT : THAT IS GOOD editorial department, Koga
1985年愛知県名古屋市生まれ。幼少の頃から絵を描く事を好み、10代の頃に地元名古屋にてアメリカのロウブロウアートシーンに触れ、興味を持ち始める。20歳の時、初めて訪れたアメリカ・ロサンゼルスのギャラリーで見たモンスターのペインティングに強い衝撃を受けて以来、独学で制作活動を開始。何度かアメリカを訪れた後、自身の肌で本場ロウブロウアートシーンを感じるため2011年単身渡米。5年間カリフォルニアでの制作活動を経て、2016年帰国。現在は名古屋を拠点に、海外でも精力的に活動中。Weirdでありながらどこか憎めない、愛嬌のあるキャラを生むキャラクターメーカーである。
Exhibition:
2011,2012 THE WORLD(Osaka)
2013,2014 mini bar(San Francisco)
2018 Momurag(Kyoto)
2018,2019,2020 MAD BOXXX(Nagoya)
2019 THE LITTLE HUT(Taipei)
2019 Dot Dot Dot Gallery(Hong Kong)
2019,2021 mograg gallery(Tokyo)