THAT IS GOOD THAT IS GOOD

音に導かれる旅 パキスタン 荒野の中に見る未来1

パキスタン 
2023年2月13日~3月7日

威厳

その眼光と佇まいには、その言葉を使わざるを得ない。

2001年9月11日に起きたNewYorkでのテロから手の平を返すような素早さで、突然名指しで指名手配され、
アフガニスタンと呼ばれる土地が空爆され、蹂躙された。

被害者ヅラのアメリカだけにとどまらず西欧列強や日本も加担し、

多くの人が関心も持たず、どこにその土地があるかもわからない、
アフガニスタンにテロリストが潜伏してるから、という理由だ。
テロリスト=イスラム教徒、というレッテルをメディアと連携して付随することで、
それまでの世界の地図を塗り替えるようだった。

世界中の多くの人たちと同様、訳もわからぬ事態に心が翻弄されつつも、
幼い頃から抱くこの世界の動きに疑心を持っていたのはここで確実に覚醒する。

この面子が真の悪の枢軸国達であり、
マッチポンプという常套手段を多用する彼らの収奪ショーに世界が巻き込まれているのを確信した。

いくら誰かにテロリスト容疑をかけられようが、一般市民まで巻きこむ空爆を容認する『正義』などあり得ない。
東京やNewYorkやパリに『それ』が潜伏してるからって絨毯爆撃する理由になるか?

とにかく
ここには裏がある。

何が奴らの狙いなのか?

その狙いは諸説あるし、彼らが長年培った『計画』の中ではその一端なだけで
我ら一般市民が知る由もないことでもある。

人を人とも思わず殺戮を行う悪人達の精神構造や目的を理解することが目的でもない。

そんな喧騒の中、その男は生まれた土地でもなく、特に恩義があるわけでもなく、
金や名声のためでもなく、市井の、特に文明という名の産業システムから置いていかれ、
貧しく、ハンセン病という栄養失調からの原因だと現代でやっと解明されたのにも関わらず、
風評で感染すると噂され、精神的にも追い詰められた人たちのために奔走していた。

経済的、社会的、精神的弱者のために。

しかし、彼はそうは思わなかったと思う。
恩義は無いにしろ、そんな彼らにかつて日本人や多くの今文明人になってしまった人々の中にあった
気高さ、清らかさ、誠実さ、逞しさ、優しさ、そこからくる美しさを感じていたと思う。

無類の蝶好きらしいその男にとって、原初的な美とは何者にも変え難いものであり、
その男の祖父が北九州の港で幼少の頃見せてくれていた『仁義』という
今では風前の灯火のような『光』『温かさ』をその土地の人に重ねて観ていたのかもしれない。

その医師、中村哲の存在は、自分たちがその9.11の不条理の連鎖の中、傀儡の象徴のような男、小泉が自衛隊まで現地に派遣し、
枢軸国に媚びへつらうことに、まさに憂国を感じ、動き出した『和プロジェクト』という市民運動の募金先を探してる中で知った。

福岡出身の友人の父が氏と同級生で、古くからアフガニスタンで先述したようなヴォランティア活動を行なっているとのことで、
まだインターネットもない時代だったのもあり、『ペシャワール会』という中村医師を支援する団体に問い合わせし、
すぐにビデオを送ってもらい、仲間達と観て、感動し、この人に託すのが一番だと満場一致で即決した。

あれから23年近くなった今、
イスラエルを中心とした相変わらずの枢軸国の野蛮で非情な爆撃はパレスチナに向けられている。

冒頭から重い話ではあるが、なぜパキスタンという土地に行くことになったのか、
それは全てここが起点になるし、去年2023年2月に思い立ってチケットを買い、その土地に到着するまでは、
その積もった想いが溢れたかのように、
まるで後ろから押されてるかのようだったが、
その押しの流れは突然来た。

2023年1月5日阿佐ヶ谷の映画館で上記のパンフレットの映画が上映されるらしいから行こう、
と妻が誘ってきたのだ。
まだコロナ騒動の(これもマッチポンプだと確信してる)悪影響で映画館もマスクがどうの、
と面倒で無意味な掟が作られていたが、
尊敬する中村哲さんの映画なら行かねば、と観てみると、
ただただ泣けて、内容を覚えてない笑。

しかし、とにかく火がついたのは間違いなく、
以前から、そうそれは2011年3月11日のあの地震の後、
東京から多くの人が放射能汚染から逃げ出し、
映画『ホピの預言』を上映するために全国各地を行脚する一環の中、
その前年まで8年近く住んでいた福岡でその映画の上映をしたタイミングで
福岡大学でパキスタン関連のイベントがあり、
訪れ、その当時気になっていた、いわゆる陰謀論的には有名な
『NEW WORLD ORDER 新世界秩序』という計画の上で、
先述した9.11からの流れで、
アフガニスタン、リビア、イラク、シリア、イラン、その後パキスタンを制圧したらその計画が完了する、
という話を聞いたことがあって、
20歳そこそこのパキスタン人の学生に、その話を知っていますか?と聞くと『知っています。』と。

そして、『もしパキスタンがアフガニスタンなどのように空爆されたらあなたはどうするのですか?』
と聞くと
『いつもと変わらない生活をします。』
と答えたのだ。

驚いたし、感心して胸が熱くなった。

その当時東北だけでなく、関東全域で避難者、移住者が相次いだし、外国人の多くは国外退去した中で、
放射能なんてレベルではない、空爆になっても。。

その話は今考えると、今のパレスチナの人たちにも通じるのかもしれない。
とにかく肝が据わってるのだ。

確固たる信念は『恐怖』『死』では揺らがないとでもいうのか。、

すでにその数ヶ月前にセネガルでの体験で自分の中のイスラムは完全に芽生えていたので、

音に導かれる旅 トルコ・モロッコ・セネガル イスラムとの邂逅 前編

その肝の据わり様の大きな要因はその宗教だとは直感的に感じたが、改めてパキスタンという国に興味を持った。

パキスタンの音楽は自分の世代的にはMASSIVE ATTACKというグループが関わった

Nusrat Fateh Ali Khan がまず思い浮かぶ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン

とにかくこの人の音楽は大好きで数十枚もアルバムを持っている。

そして先述したように2011年は2月にトルコ、セネガルを訪れ、イスラムの洗礼を受け、
『スーフィー』という言葉に大きなヒントを見出した年だったが、
Nusratもまたそのスーフィー系の音楽家だと思う。

スーフィーとはなんぞや、というのに今は文字を割けられないが、
日本でも馴染みのある『虚無僧』や寺を持たず、信仰の中に生きる『修験道』的世界にも通じる、
俗世間にある意味墜ち、その中でも自分と神(精神世界)との接点を強固にしていく生き方。
だと個人的には思っている。

そしてスーフィー系の人達は音楽を友にするのは、尺八を携帯して行脚する虚無僧にもやはり近い。

ともかくパキスタンはその件から、いつか訪れてみたい土地になった。

それから12年。
流れは実は何方向からもあった。

その3.11の翌年くらいに出会ったNakamullahは当時モロッコのグナワという音楽の演奏者の招聘に関わっていて、
彼らが関わった池袋のイベントで出会ったのだが(マーシャッラー)、彼はその頃からイスラムに傾倒していき、
3年ほど前に完全にムスリムとなった音楽仲間で、以前は自分の企画するイベントなどにも貢献してくれていたのだが、
その彼がこの数年、東京の大塚にあるパキスタンの人たちを中心に作られたモスクで働き始め、
是非来て欲しいと2022年頃から言われていたのだ。

ということで、この流れ的にいよいよ行かねばと訪れた。

その中村君aka Nakamullahの上司であるHaroon Qureshi(ハルーン)さんを紹介された。
会って早々、先述した『New World Order』の話をすると、やはり彼も知っていて、
とにかく興味あるなら私の家族もラホールという街にいますし、協力しますよ、と快く歓迎してくれた。

とにかくこのハルーンさんは素晴らしい人格者で、
コロナ中に餓死が相次いだ東京のホームレスの為に無償で炊き出しを行ったり、
貿易会社の社長という肩書を持ち、ちゃんと社員を食わせながらも奉仕としてモスクの運営に携わり、
大塚の地域住民とも親睦を図り、イスラムのイメージをよくしようと日々奔走しているらしい。

中村哲氏は福岡の西南という学校にいたのもあり、クリスチャンであるのだが、
その精神性の奥、高みに登る人たちにとってはジャンルを超越して慈愛が生まれるようだ。

既に日本在住20年近くで奥さんもムスリムの日本人で、
息子たちも当然ムスリム。ほぼ同世代で親しみが湧く。

パキスタン外務省とも繋がるハルーンさんと繋がったことで完全にその道は開けた。
実際にヴィザを取る上でも1時間近く忙しい中PCでの手続きを付き合ってくれた。
感謝しかない。

そしてまた違う角度からのガイダンス・流れも。

タロウとはヒップホップグループTHE BLUE HERBの一味として出会ったのだが、札幌在住の時より彼の地元である福岡で何回も遊んだり、
2018年フランス、リヨンでライブをやった後、ついでで寄ったパリで、ノリでACID ARABというクルーがパーティーを自分の為に急遽組んでくれて、
そこにも偶然?参加してくれ、語学もコミュ力も相当高く世界をまたぐビジネスマンとしての彼のスキルで色々と世話にもなった。
そんなタロウからこのタイミングで偶然?連絡がきて、実は彼が1ヶ月前、年末年始で一人でパキスタンに行っていたというのだ!
彼のメインの目的は北部のフンザというとこで、自分のミッション的には範疇ではなかったが、
とても興味深く、しかもそのフンザのレコードを持っていたことも判明!

とにかくタロウにはパキスタン滞在中も細かいことでも色々と世話になることとなる。

そしてDJ・レイブパーティーの流れから繋がったGOUKI君とはかれこれ10年近くの付き合いになるが、
彼はなんとインドも含めパキスタンに10回以上訪れていて、ペシャワールのアフガン難民キャンプ近くにも数ヶ月は毎回滞在していたという。
そんな話を彼の地元である目黒まで赴き、たくさんの貴重情報を得れた。
特にインドとパキスタンの関係は言語的にはヒンディーとウルドゥーという文字も、宗教も違う国家なわけだが、
ご存知のようにイギリスからの独立のドサクサで分裂し、今も相当仲が悪いのだが、音声としては全く一緒だから、
インド人はパキスタンの音楽も聴いて楽しむし、パキスタン人もインド映画を普通に楽しむ、という。
だからそのエリアだけで10億人くらいいそうだが、YouTube再生はものすごい数になるらしい。
また9.11以降アフガンから避難した数万人の人たちがペシャワールに難民として滞在し、
そこはまたアメリカ政府が彼らをアフガンに追い出すまでの10年間くらいはとても賑やかで楽しい場所だったという。
タリバンとも何度も連んでいて、多分あなたは気が合うと思いますよ!とも言われた笑

渋谷のワールドミュージック専門店エルスールの店主原田さんは、そのお店に3.11以降から頻繁に通う様になり、
自分のレーベルCrosspointのタイトルも売れない売れない、と言われながらもいつも買い取ってくれ、
お店に行くとコーヒーや酒を振る舞われ、長話をしに行くのだが、
近年は自分がレコーディングに行く時や楽曲制作時にインスパイアが欲しいときに訪れ、
確実にいい情報や音源を提示してくれるメンター的存在だ。
今回のパキスタンというお題にも色々とその背景を教えてもらえた。
音源的にはパキスタンというよりやはりアフガニスタン出身の人で

Virtuoso From Afghanistan – Ustad Mohammad Omar

の音源はとても響いて、自分が今回パキスタンにレコーディングしに行く上で、
最も重要な楽器はこのアフガンルバーブなのだと確信した。
また現行のワールドミュージックとして最も評価されているサッチャルJAZZの事も色々と教えてもらい、
そのリーダーの人と偶然?インシャッラー、出会うことになる。

ソング・オブ・ラホール
https://asiandocs.co.jp/contents/16

最後の一人は昔、原宿で誤解というバーをやっていて今は渋谷のバーで働く通称イッチャン、石井さんという男だ。
彼は元々江戸っ子エリアの生まれの人で10代からDJをGOLDなどでやっていたらしいが、その後ヒルトンのバーで働き、
その類稀なセンスで作るカクテルと、落語好きでもあるそのド渋な感覚で10年近くやっていたバー『誤解』は、
まさに通な人たちが集まる東京の秘境のような場所だった。
自分はGoroさんという民族音楽系マルチ奏者に連れて行かれたのだが、そこで知り合った人達はとにかく濃い。

そんなイッチャンからタリバンがよく被ってるあの帽子、パコール、もしくはチトラル帽を買ってきて欲しいと五千円握らされ、酒も奢られた笑

先ほど見つけた
https://milshop-maitri.com/?pid=151042663
によると

アフガニスタン周辺の民族衣装の一つ、パコールは
ムジャヒディン・アルカイダ・タリバンなどが着用しているイメージが強いですが、
中東全域で多く見られる一般的な衣類でもあります。現地での入手性が高く防寒性が高いため、
米兵や諸外国兵が使用することもあり、映画「ホースソルジャー」のモデルになった部隊も実際にこの帽子を使っていました。

とにかく、これはまた軽いものながら重い任務を背負ったな、と思ったが、
このミッションがまた重要な出会いを生むことになる。

そしてチケットも割と安く手に入れ、くだらないとは思いつつ、
しょうがないのでPCR検査の証明書を取りに行ったり、
パスポートも期限が切れていたことを気づき、急いで取りに行ったり、
改めて必要なものを買い出しに行ったり、、

そんな中先述したNakamullahから是非新宿にあるウイグル料理屋さんに行きましょう、と誘われ、
改めてウイグルがイスラム圏であり、その料理が完全ハラールでとても美味しく、
そして中国からのとんでもなく酷い制圧、支配を受けているのだと痛感。

その流れで、アラブ、イスラム系の音源のエキスパートである彼のレコードコレクションを拝聴し、色々とインスパイアを得れた。

特にインスパイアを与えてくれ、彼がプレゼントもしてくれたこのレコードには感激した。
まさに近年自分の音を『土っぽい音』と愛染という自分より20歳下のラッパーから言われたり、
このユーラシア大陸の響きは自分の中にある響きで、このインナーの文章も大層感銘を受け、現地にも持ち込んで読んでいた。

そして改めて、先述したようにパキスタンというより、アフガニスタンにどうも惹かれていることが如実となる。

またこの数週間の度重なるガイダンスをより深めるために、前から気になっていた
アジアンドキュメンタリーズというドキュメンタリー系サブスクチャンネルに改めて登録してパキスタン関連の映画を見まくる。
https://asiandocs.co.jp

特に印象に残ったのが下記でパキスタンの光と影を痛烈に感じた。

ザ・シンフォニー・オブ・イラン
https://asiandocs.co.jp/contents/162

音楽は“罪”じゃない 街角の音楽学校
https://asiandocs.co.jp/contents/271

パキスタンに見棄てられて
https://asiandocs.co.jp/contents/32

特に上記のこの内容は本当に酷く、、
チケット取ったのにキャンセルしようかと初めて本気で思ったくらいだ笑

まさに地獄。

日本も年間3万人も自殺するくらい酷いと言えば酷いが、
これは凄すぎて、目も当てれない。

宗教としてのイスラムが、このカラチという場所では通用してない、としか思えない。。

救いがないのか。。

そして近所のTSUTAYAが潰れる前に借りれたこのDVDはとてつもなくDOPEな内容だったが、
最後に感動して泣ける名作で、アフガニスタンの現実を痛烈に感じれたし、
この中で重要な要素となる『凧揚げ』を現地で子供たちがやってる光景を見た時は、本当に感動した。

君のためなら千回でも

是非見て欲しい名作。

そして出航前日、自分の中では完全に縁のあるモスク、自分にとっての一番重要な落ち着ける場所、
とも言える代々木上原にある東京ジャミーに旅の安全と録音の成功を見守ってくれるように参拝に行ってきた。

何かが整った。
あとは挑むしかない。

この文章を読んで貰えばわかる通り、コネンクションとしてはハルーンさんの親戚がいて、
そこがサポートはしてくれるものの、特に具体的なミュージシャンとのツテもなく、相変わらずの即興の旅になるのだが、それでも確信はある。

音が導いてくれると。

未だマスクだらけの日本のゲートを出て、
予想通り、外国人は誰もマスクなんかしてない成田空港の国際線出発ゲートに胸が高鳴る。

そして旅は続く

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J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY / NXS /CROSSPOINT)
http://www.nxs.jp/
https://linktr.ee/JAKAM

東京出身。15歳からバンドとDJの活動を並行して始め、スケートボードを通して知り合ったメンバーで結成されたバンドEvilPowersMeの音源は、結成後すぐにアメリカのイラストレイターPusheadのレーベル等からリリースされる。DJとしてもその革新的でオリジナルなスタイルが一世を風靡し、瞬く間に国内外の巨大なフェスからアンダーグランドなパーティまで活動が展開される。 ソロの楽曲制作としても米Grand RoyalからのBuffalo Daughterのリミックスを皮切りに、Boredoms等のリミックス等メジャー、インディー問わず様々なレーベルからリリースされる。2003年にキューバで現地ミュージシャンとレコーディングツアーを敢行したのを皮切りに、その後世界各地で録音を重ね、新たなWorld Musicの指針として、立ち上げたレーベルCROSSPOINTを始動。
2015年から始まった怒濤の9ヶ月連続ヴァイナルリリースは大きな話題になり、その影響でベルリン/イスラエルのレーベルMalka Tutiなどからワールドワイドにリリースされ、DJ TASAKAとのHIGHTIME Inc.、Nitro Microphone UndergroundのMACKA-CHINとPART2STYLEのMaLとのユニットZEN RYDAZ、Minilogue/Son KiteのMarcus HenrikssonとKuniyukiとのユニットMYSTICSなど、そのオリジナルなヴィジョンは、あらゆるジャンルをまたぎ、拡散し続けている。また音楽制作のみならず、映像作品、絵本や画集 のプロデュース、野外フェスOoneness Camp”縄文と再生”を企画するなど活動は多岐に渡る。

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